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無線方式博士の電波講座

【第1回】様々な無線通信システム

 私たちは様々な無線通信システムの存在を特に意識しないで利用しています。これらのシステムにはどのようなものがあるのか代表的なものを挙げてみましょう。

携帯電話

 携帯電話は一番身近な無線通信システムです。携帯電話が第2世代になってから加入者が飛躍的に増加し、今やビジネス利用だけでなく生活および娯楽などのプライベートな利用に不可欠な存在となっています。

 表1に携帯電話の発展をまとめてみました。携帯電話は基地局との間の通信方式によって世代が分けられます。

表1. 携帯電話の発展

  第1世代
(1G)
第2世代
(2G)
第3世代
(3G)
第3.5世代
(3.5G)
第3.9世代
(3.9G)
通信方式 NTT方式
NTT大容量方式
PDC [1]
cdmaOne [2]
W-CDMA
CDMA2000
HSPA
CDMA2000
1×EV-DO
LTE
アクセス方式 FDMA TDMA [1]
CDMA[2]
CDMA CDMA OFDMA
複信方式 FDD FDD FDD FDD FDD
主な
データ変調方式
FM π/4-QPSK
BPSK
BPSK
QPSK
QPSK
16QAM
QPSK
16QAM
64QAM
速度 音声 数Kbit/s 384kbit/s 14Mbit/s 100Mbit/s
  • PDC:Personal Digital Cellular
  • HSPA:High Speed PacketAccess
  • LTE:Long Term Evolution
  • FDD:Frequency Division Dulex
  • FDMA:Frequency Division Multiple access
  • TDMA:Time Division Multiple Access
  • CDMA:Code Division Multiple Access
  • ODFMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access
  • FM:Frequency Modulation
  • BPSK:Binary phase shift keying
  • QPSK:Quadrature Phase Shift Keying
  • π/4-QPSK:π/4 Shift Quadrature Phase Shift Keying
  • QAM:Quadrature Amplitude Modulation

 第1世代はFM変調を用いたアナログ方式で1979年12月から自動車電話サービスが開始されました。[ア]

 さらに1988年5月には携帯専用型ショルダーホンのサービスが開始されました。当時のショルダーホンの重さは約2.5kg、連続通話時間約40分、連続待ち受け時間約8時間でした。[イ]

 これに対して現在の携帯電話は、重さ100数十g、容積約100cc、連続通話時間約800分、連続待ち受け時間約450時間になり第1世代とは比較にならない程小型、軽量化され、性能は向上し機能も充実しています。[ウ]

 第2世代から変調方式はデジタル化され、音声通話に加えメールの送受信やインターネットへのアクセスが可能となり、いつでも、どこでも、多様な情報が得られるようになりました。この結果、加入者は急増し2000年末で5800万加入、さらに2013年3月末で1億3100万加入を超えたと報告されています。[エ]

 なお、日本においては第1世代および第2世代のサービスは終了しています。

 携帯電話加入者の増加とともに、音声通話に加え高速インターネットアクセスさらに動画像伝送など利用形態も多様化し、これに伴うトラヒックの増大に対応するため伝送速度の高速化・大容量化が求められるようになりました。このため携帯基地局と携帯電話の無線区間の電波の利用効率を高めるCDMA、OFDMAなどの高度なアクセス技術さらにMIMOという複数のアンテナを用いて伝送速度を高速化する技術が導入されました。これらの技術は現在の携帯電話の中心的な技術となっています。またデータの変調方式はBPSK、QPSK、QAMなどの変調方式が使われています。これらの変調方式については後の講座で詳しく説明します。

 このように携帯電話をはじめとする各種情報機器の小型、高機能化、高性能化などの実現の背景にはデバイス技術の発展があります。従来、トランジスタなどの個別半導体で構成していたアンプなどの回路はアナログIC(Integrated Circuit)化、デジタル信号処理回路はデジタルLSI(Large Scale Integrated circuit)化、さらにコンデンサ、コイル、抵抗などのデバイス類が小型化されました。これらの技術が携帯電話など各種情報機器の小型、高機能化、高性能化の発展を支えたといえます。

 携帯電話は自分の端末と相手の端末が電波で直接つながって通信ができるわけではありません。いろいろな中継装置、通信回線を経由してつながります。

 携帯電話はセル方式といってサービスエリア全体が小さな単位のセルに分割され、セル間で電波の干渉による影響が殆ど無いように同じチャンネル(周波数)を繰り返して配置・使用し、周波数の有効利用を図っており、これにより限られた周波数で多くの携帯電話が使えるわけです。また携帯電話がセル間を移動しても問題なく通話(通信)ができるように、すべての携帯電話の位置情報等をホームメモリでリアルタイム管理し、携帯電話が通信中にセル間を移動してもハンドオーバという技術で通信が切れないようにしています。実際のセルの大きさは屋外で数百m~数km、屋内では数十mといわれています。

図1 携帯電話の無線基地局構成の一例

 図1に携帯電話の無線基地局系構成の一例を示します。基地局制御装置は携帯基地局と交換機を結ぶための中継機能を持ち、携帯基地局と基地局制御装置間はエントランス回線で接続され各セルに配置されたチャンネル(周波数)で携帯電話と無線通信を行います。第2世代ではこのエントランス回線は主にISDN回線という伝送速度が192kbit/sから1.5Mbit/sの専用線が使われ、また専用線が敷設困難な地域(セル)にはマイクロ波エントランス回線が使われていました。第3世代以降、加入者の増加に伴うトラヒック増大に対応するため、エントランス回線も伝送容量を増大する必要が生じました。このためエントランス回線は大容量伝送が可能な光ケーブルに置き換えられ、現在のエントランス回線の殆どは光ケーブルが用いられており、光ケーブルの敷設が困難な地域(セル)にマイクロ波エントランス回線が使われています。またイベント会場など一時的に多数の加入者が集まりトラヒックが集中的に増大する場所にはマイクロ波エントランス回線が搭載されている可搬型移動無線基地局が臨時利用されています。また災害時の通信確保のため前記可搬型移動無線基地局の利用が計画されています。

 マイクロ波を用いたエントランス回線の周波数には主に11GHz、15GHz、18GHz帯などが利用され、変調方式は64QAMで1チャンネル(波)あたり150Mbit/sの伝送が可能です。[オ]

 図1において、携帯基地局と携帯電話間の無線区間の周波数は第2世代では800MHz帯と1.5GHz帯の2周波数帯でしたが、加入者増と高速インターネットアクセス、動画像伝送などの利用形態の多様化に伴うトラヒック増大に対応するため現在は800MHz、900MHz、1.5GHz、1.7GHz、2GHz帯が配置され、通信用の周波数帯域は拡大しました。さらに新規に700MHz帯が配置され今後LTEサービスが開始される予定です。また次世代のシステムとして新しい周波数帯で1Gbit/sという光ファイバと同等の伝送速度を持つ第4世代(IMT-Advanced)の実現も目前です。

無線LAN

 無線LANには2.4GHz帯、5GHz帯およびミリ波の60GHz帯が割り当てられています。現在最も利用されているのは2.4GHz帯無線LANですが、最近は干渉の比較的少ない5GHz帯無線LANも普及しつつあります。これらの殆どの無線LANはWi-Fi(ワイファイ)認証を得ており、Wi-Fiロゴの添付された製品であれば製造メーカが異なっていても使用できることが保証されています。現在は携帯電話機、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットなど殆どの情報機器にWi-Fi認証された無線LANが組み込まれており、人の多く集まるホットスポットや家庭内などアクセスポイントの設置されている様々なところでメールの送受信やインターネットへのアクセスに利用されています。

 Wi-Fi認証は802.11a/b/g/n規格それぞれについて個別に行われます。無線LAN機器および無線LANの搭載された機器にはどの規格に対応しているか表示されています。

 また60GHz帯無線LANは802.11adで標準化されており、ミリ波を使用しているため通信距離は数メートル程度と2.4GHz帯や5GHz帯に比べて短距離ですが帯域を広く使うことができるため、1Gbit/sの高速データ伝送が可能です。

 表2に2.4GHz帯および5GHz帯無線LANの主要規格を示します。

 802.11規格は2.4GHz帯の無線と赤外線をサポートする規格で、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)というアクセス制御方式を採用しており、802.11規格のCSMA/CAによるアクセス制御方式は以後の無線LAN発展の基礎となる概念と言われています。

 また無線LANに用いられているデータ変調方式はBPSK、QPSK、QAMなど、携帯電話と同じ変調技術が使われています。

表2. 無線LANの主要規格

規格名 使用周波数 伝送方式 変調方式 最大伝送速度
802.11 2.4GHz帯 DSSS DBPSK
DQPSK
1Mbit/s
2Mbit/s
FHSS 2-GFSK
4-GFSK
赤外線 IR 16PPM
4PPM
802.11b 2.4GHz帯 DSSS DBPSK
DQPSK
CCK
11Mbit/s
802.11a 5GHz帯 OFDM BPSK 16QAM
QPSK 64QAM
54Mbit/s
802.11g 2.4GHz帯 OFDM BPSK 16QAM
QPSK 64QAM
54Mbit/s
802.11n 5GHz帯/2.4GHz帯 OFDM/MIMO BPSK 16QAM
QPSK 64QAM
100Mbit/s以上
600Mbit/s(MIMO)
  • DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum
  • FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum
  • IR:Infrared
  • OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing
  • MIMO:Multiple Input Multiple Output
  • DBPSK:Differential Binary Phase Shift Keying
  • DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying
  • GFSK: Gaussian Filtered Frequency Shift Keying
  • PPM:Pulse Position Modulation
  • CCK:Complementary Code Keying

 表2に示した無線LANは、電波法令で定めている技術基準に適合していれば誰でも使え、無線従事者の資格は不要です。

 また、表2には挙げていませんが802.11jという規格があります。これは802.11a規格を日本向けに修正したもので、周波数は4.9GHz帯を用いており屋外使用が可能ですが、免許が必要です。4.9GHz帯の無線LANは干渉が少ないので高速で安定した伝送路が構築可能で、映像のような大容量の情報を伝送するシステムに適しています。当社では802.11jおよび802.11b/g無線LANを搭載した「Falcon WAVE®」という製品を開発・販売しております。4.9GHz帯のアンテナは、メタマテリアル技術を応用し高利得で小型化を実現しました。さらに当社の無線LAN技術によりハイビジョンの映像をPoint to Point伝送で12kmの距離において安定した伝送を確認しています。

放送

 放送は「公衆によって直接受信される無線通信」と電波法で定義されており、上記で説明した携帯電話や無線LANシステムの「双方向通信」に対して、放送局が送信した電波を私たちが必要な時に必要な番組を受信する「片方向通信」であるところが異なります。放送にはAMラジオ放送、FMラジオ放送、地上デジタル放送などがあります。AMとは変調方式のAmplitude Modulation(振幅変調)を略したもの、FMとはFrequency Modulation(周波数変調)のことです。

 日本のAMラジオ放送は526.5KHz~1606.5KHzのMF帯の電波を用いています。MF帯は、夜間は電離層で反射されやすく電波は遠くまで届きますので遠方のAM放送局の番組を聴くことができる場合があります。

 また日本のFMラジオ放送は76MHz~90MHzのVHF帯が配置されており、全国の都道府県にFMラジオ(県域放送)局が開設されています。VHF帯はMF帯と比べて電波の到達距離が短いため、この特徴を利用して地域密着型の情報提供を目的とするコミュニティFM放送局も多数開設されています。

 地上デジタル放送は、470MHz~710MHzのUHF帯で運用されています。地上テレビ放送のデジタル化により携帯電話、移動体向けのワンセグサービス、さらに双方向サービスなど多様なサービスが可能となりました。

 従来のアナログテレビ放送に使用していた周波数は90MHz~108MHz、170MHz~222MHzおよび470MHz~770MHzで、これを合計すると370MHzの帯域が必要でしたが、デジタル化により470MHz~710MHzの240MHz帯域で運用することができるようになり、空いた周波数帯は携帯電話や他の用途への有効利用が可能となりました。

 それでは私たちが殆ど毎日視聴している地上デジタル放送はどのようにして中継されているのでしょうか。

 図2は地上デジタル波の中継ネットワークの構成例を示したものです。ここでは放送局で制作された番組はSTL回線で親局送信所に伝送され地上デジタル放送波として送信し各家庭で視聴されます。さらに全国の各放送所へ伝送するためTTL回線を用いて中継送信所に伝送します。中継送信所では地上デジタル放送に変換して送信します。

 STL回線はデジタル化された映像、音声およびデータを多重化したTS(Transport Stream)データを64QAM変調しマイクロ波で伝送します。またTTL回線の方式は2種類ありSTLから送信された64QAM変調信号を復調し元のTSデータに戻し、再度TSデータを64QAM変調し中継する再生中継方式と、64QAM変調されたIF(Intermediate Frequency:中間周波数)をそのまま中継する非再生中継方式があります。特に非再生中継方式は中継区間で発生した雑音および中継装置の雑音などが相加されるため、各種雑音に対処する技術が必要となります。

 各送信所では64QAM変調された信号をTSデータに復調し、UHF帯のOFDM変調波に変換して地上デジタル放送波として送信します。

 地上デジタル放送にも携帯電話や無線LANと同じQAM変調技術が使われています。

図2 地上デジタル放送波の中継ネットワーク構成例

 今回は、私たちが殆ど毎日利用している携帯電話、無線LANおよび放送など身近な無線通信システムの概要を説明しました。次回から、これらの無線通信システムの構成に必要な各種技術についてお話ししたいと思います。

コラム 八木アンテナにまつわる話

 無線通信の歴史的な出来事として、1864年にマクスウエル(James Clerk Maxwell)が電磁波の存在を理論的に予測、そして1888年にヘルツ(Heinrich Rudolf Hertz)により電波を送信し、それを受信できることを実験で確認、さらに1895年にマルコーニ(Gugliemo Marconi)の無線通信実験の成功により電波を用いた無線通信の時代が幕開けしました。
無線通信は当初、船舶通信など業務用で使われていましたが、その後(1900年代)ラジオ放送などにも使われるようになりました。

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