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無線方式博士の電波講座

【第7回】無線回線の工事設計〜フェージングマージンと歪雑音・干渉雑音〜

17. 雑音配分

 第6回講座では無線回線の雑音配分の熱雑音について説明しました。今回は歪雑音について説明します。

17.1 歪雑音

 歪雑音とは、送受間干渉、局部発振器雑音など置局条件により変動しない雑音とされています。
はじめに、送受間干渉とは自局の無線設備内部で発生する干渉で、図25に示すように、①送受共用器(T/R)の送信ポートから受信ポートへの送信信号の漏れこみ、および②アンテナのインピーダンス不整合が原因で発生する送信信号の反射波によるものがあります。これらの送受間干渉量を求めてみましょう。送受間干渉量は①と②の電力和となります。

図25 送受間干渉の経路

図25 送受間干渉の経路

1.送受共用器(T/R)内部で発生する送受間干渉の経路

送信器⇒BPF(T)⇒サーキュレータ(p1)⇒サーキュレータ(p3)⇒BPF(R)⇒受信器

 サーキュレータp1⇒p2⇒p3の経路は順方向ですので高周波電力は0.5dB程度の損失で通過しますが、p1⇒p3⇒p2の経路は逆方向のため通過損失が大となります。逆方向の通過損失は無限大が望ましいのですが実際には30dB程度です。

 ここで経路①の送受間干渉量は

経路①の送受間干渉量=(送信電力(Pt))-(BPF(T)の損失)-(サーキュレータ逆方向通過損失(p1⇒p3))-(IRF(|f1-f2|=160MHz)・・・(17.1)

 ここでIRFという係数が出てきましたが、これは干渉軽減係数(Interference Reduction Factor:IRF)と呼ばれ、無線通信の干渉検討に重要な係数です。[*4]  

【説明】
 *4:IRF
下図に示すように受信系に入力される希望波(Di)と干渉波(Ui)の比をDi/Ui、受信系通過後の希望波(Do)と干渉波(Uo)の比をDo/UoとするとIRFは下式で表わされます。

IRF=(Di/Ui/Do/Uo)

受信系にDiおよびUiが入力された場合、希望波は殆んど減衰せずにDoとして出力されますが、Uiは受信系の帯域特性により減衰してUoとして出力されます。IRFは希望波と干渉波の周波数差(Δf)、干渉波のスペクトルおよび受信系の帯域特性に依存します。[ア]

IRF 説明

本工事設計では中継局の送信周波数と受信周波数差は160MHzと規定されており、本項では、送受共用器BPF(R)、受信器、復調器の帯域特性からIRFを110dBとします。

ここで、送信電力(Pt)=30dBm、BPF(T)損失=2.5dB、サーキュレータ逆方向損失(p1⇒p3)=30dB、IRF(Δf=160MHz)=110dBを(17.1)式に代入すると
送受間干渉量①=30-2.5-30-110=-112.5(dBm)となります。

次に

2.アンテナのインピーダンス不整合で発生する反射波による送受間干渉の経路

 送信器⇒BPF(T)⇒サーキュレータ(p1⇒p2)⇒フィーダ⇒アンテナの反射波⇒フィーダ⇒サーキュレータ(p2⇒p3)⇒BPF(R)⇒受信器

 経路②の送受間干渉量を計算します。

経路②の送受間干渉量=(送信電力(Pt))-(BPF(T)の損失)-(フィーダ損失)-(アンテナのリターンロス(RL))-(フィーダ損失)-(サーキュレータ順方向通過損失(p2⇒p3))-IRF(Δf=160MHz)・・・(17.2)

 アンテナのRLはアンテナ端における送信波(進行波)と無線装置側に戻る反射波の比をデシベルで表したもので、アンテナのVSWRを1.2とすると、RLは

RL=20×log10(VSWR-1/VSWR+1)・・・(17.3)

(17.3)式からRL=-20.83dBとなります。

弊社HP電波関連ツール参照

 経路②の送受間干渉量は、(17.2)式に各数値を代入すると

経路②の送受間干渉量=30-2.5-0.5-5-20.83-5-0.5-110=-114.33dBm

となります。

 送受間干渉量は経路①と経路②の電力和となりますから

送受間干渉量(Ntr)=①+②=(-112.5dBm)+(-114.33dBm)=-110.31dBm

 従って本工事設計における送受間干渉量は伝搬路を介在していないので一定値の-110.31dBmとなります。この送受間干渉量が雑音配分を満足するか確認してみましょう。

 平常時の送受信間干渉雑音C/Ntrは

C/Ntr=Pr-Ntr=-44.5-(-110.31)=65.81dB

 またフェージング時のC/Ntr_fmは

C/Ntr_fm=Pr-Ntr-fm=-44.5-(-110.31)-30=35.81dB

 となり、雑音配分(第5回 図21:歪雑音)の32.8dBに対して3dBマージンがあります。この3dBを局部発信器雑音に配分することができます。

 局部発振器は送信器および受信器に用いられています。

 (ア)送信器:送信周波数変換用発振器
 (イ)受信器:受信周波数変換用発振器

 送信器では変調器のIF出力を、送信周波数変換器を用いてマイクロ波帯(6.5GHz)の送信信号に周波数変換します。受信器ではこの逆の操作を行い、受信した6.5GHzのマイクロ波を受信用周波数変換器でIFに周波数変換し復調器に出力します。

 無線機では(ア)、(イ)の他に、変調器に変調用搬送波発振器、復調器には復調用基準搬送波発振器が用いられますが、本講座ではこれらによる雑音は装置の固定劣化に分類したいと考えます。

 図26は局部発振器の出力スペクトルの一例で、理想的なスペクトルはfoにおいて線スペクトルとなることが望ましいのですが、実際には発振素子、回路で発生する雑音が重畳します。従って上記(ア)、(イ)の各発振器の雑音は相加され、受信器の識別・判定すなわち符号誤り特性に影響を与えます。これは変調多値数の増加に伴って雑音の影響を受けやすくなるため、発振器雑音の低減化が重要となります。

図26 局部発振器出力スペクトルの例

図26 局部発振器出力スペクトルの例

 次回は干渉雑音について説明いたします。

コラム 雑音指数(NF)の測定

 再度、昔の話で恐縮ですが、雑音指数(NF)測定器の入手・確保が困難な時代がありました。当時、国産化され始めた高周波用トランジスタを用いて、RFと言っても70MHz帯増幅器を試作し、これのNF評価を行うためノイズソースを手作りして測定を行いました。構成は、図に示すような真空管ノイズダイオード、フィラメント電流を調整する可変抵抗器、プレート電流を測定する直流電流計、および乾電池を用いた簡単なものでした。ちなみにフィラメント用電源は約6V(1.5V電池4個)、プレート用電源は電圧67.5Vの積層電池でした。
本ノイズソースを用いたNFの測定手順は以下のとおりです。

 1. ノイズソース、被測定用増幅器、電力計を接続
  (ノイズソース以外の電源をONにしてヒートランを十分に行う)
 2. ノイズソースのフィラメント電源がOFFのときの増幅器出力の雑音電力値を測定
 3. ノイズソースのフィラメント電源をON、可変抵抗器を調整してフィラメント電流を変化し、増幅器出力の雑音電力値が2項の2倍(3dB増加)となるプレート電流(Ib)を求める

 

上記測定の結果から増幅器のNFは
NF=10×Log10(20×Ib×R):但し、常温(290°K)のとき
Ib:アンペア
R:負荷の抵抗分(Ω)
測定確度・精度は不明でしたが、相対的な評価には十分役に立ちました。
 

図 雑音指数測定用ノイズソースと測定系

図 雑音指数測定用ノイズソースと測定系

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