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無線方式博士の電波講座

【第9回】異伝搬路干渉

第8回講座では同一伝搬路干渉について説明しました。今回は異伝搬路干渉について説明します。

1.異伝搬路干渉

 図30に自システムおよび他システム(d)の周波数配置を示します。干渉数を2波とした場合、同図に示すように「同一周波数」および「隣接周波数」の厳しい干渉条件が考えられます。
 また、自システムと他システム(d)の無線回線は図27に示すように別ルートとなっており、フェージング発生の確率および形態はそれぞれの無線区間で独立(無相関)であることを想定しています。[ア]これは、自システムの無線区間でフェージングが発生し受信レベルが低下したとき、干渉経路Didではフェージングの発生が無い状態すなわち最悪の干渉条件で検討を行います。

図30 異伝搬路干渉の周波数配置例

図30 異伝搬路干渉の周波数配置例

 本干渉検討は、同一伝搬路干渉と同様の方法で干渉量を算出します。計算シートの例を表13に示します。同表において与干渉側は他システム(d)の送信、被干渉側は自システムの受信となります。第8回講座②.4項と同様に送信系および給電系は同じパラメータを用います。

表13. 異伝搬路干渉計算シートの例

項目 記号 数値等 単位 備考
他システム(d)
(異伝搬路)
(C局)
自システム
(B局)

周波数帯 f 6.7 GHz 6.57~6.87
信号帯域幅 BW 9.5 MHz  
変調方式   QPSK    
干渉経路長 Did 10 km C局→B局

送信電力 Ptd 30 dBm  
送受共用器損失 Ldd 3 dB  
フィーダ損失 Lfd 5 dB  
アンテナ利得 Gad 42 dBi 【参考】
電波法関係審査基準 
第2 陸上関係 4 
その他 (4)ウ(ウ)C
「標準受信空中線特性」
アンテナ指向性利得
(dθ:12°)
Gadθ 8.3 dBi
干渉経路
伝搬損失
Lpd 129 dB 【参考】弊社HP
「電波関連計算ツール」
干渉経路
フェージング発生量
Fmd 0 dB 干渉経路フェージング
発生なしとする

アンテナ利得 Gar 42 dBi 【参考】
電波法関係審査基準 
第2 陸上関係 4 
その他 (4)ウ(ウ)C
「標準受信空中線特性」
アンテナ指向性利得
(rθ:16°)
Garθ 4.9 dBi
フィーダ損失 Lfr 5 dB  
送受共用器損失 Ldr 3 dB  
定常時受信電力 Pr -44.9 dBm 搬送波電力:C
フェージング
マージン
Fmr 30 dB  
IRF(Δf:0MHz) IRF(0) 0 dB 【引用】
電波法関係審査基準
第2 陸上関係 4
その他 (4)
別紙(4)-14 1
IRFの値 (2)
IRF(Δf:10MHz) IRF(10) 27 dB



定常時干渉電力
(IRF(0))
Id(0) -101.8 dBm Ptd-Ldd-Lfd+Gadθ
-Lpd+Garθ-Lfr
-Ldr-IRF(0)
定常時干渉電力
(IRF(10))
Id(10) -128.8 dBm Ptd-Ldd-Lfd+Gadθ
-Lpd+Garθ-Lfr
-Ldr-IRF(10)
定常時干渉電力 Id -101.79 dBm Id(0)+Id(10)
定常時C/Id C/Id 56.89 dB Pr-Id
フェージング時
C/Id fmr
C/Id fmr 26.89 dB Pr-Fmr-Id(干渉雑音
配分値:21dB/2波):
自区間フェージング発生

 同一伝搬路と異なるのは与干渉側と被干渉側双方のアンテナの方向です。C局⇔D局およびA局⇔B局のそれぞれのアンテナは正対していますが、C局⇒B局のアンテナは異なるルートであるため正対していません。このためアンテナの指向性利得は図27に示したC局⇒B局の離隔角度dθおよびB局⇒C局の離隔角度rθにおける利得となり、正対の状態と比べると利得は小さくなります。
 図27に示す干渉モデルにおいて、離隔角度dθを12度、rθを16度とした場合の各アンテナの指向性利得は実際のアンテナの指向性特性から求める必要がありますが、本講座では「電波法関係審査基準 第2 陸上関係 4 その他 (4)ウ(ウ)C(標準受信空中線特性)」から指向性利得を求めることとしました。
 その結果、C局のアンテナ指向性利得は、離隔角度dθが12度のときGadθは8.3dBi、およびB局のアンテナ指向性利得はrθが16度のときGarθは4.9dBiとなりました。上記各θにおける指向性利得は第8回講座②.4項と同様に標準受信空中線利得の計算結果から6dB減じています。

 本検討に必要なIRFは電波法関係審査基準に規定されている数値を引用し、離隔周波数Δf=0MHzのとき0dB、Δf=10MHzのとき27dBを用います。

2.異伝搬路干渉の計算例:C局⇒B局

 図30に示す異伝搬路の周波数配置例における、定常時およびフェージング時のC局他システム(d)2波のB局自システムチャンネルへの干渉電力を1波ごとに算出し、2波の干渉の電力和から搬送波電力対干渉電力比C/IdおよびC/Id fmrを求め、その結果を干渉雑音配分値と比較し判定を行います。

1. 定常時の他システム(d)2波の干渉電力Id(0)およびId(10)を算出し、搬送波電力対干渉電力比、C/Idを求めます。

定常時の干渉電力Id(0)およびId(10)を算出します。

次に、2波の電力和から定常時の干渉電力Idを求めます。

従って、B局の定常時の受信電力は-44.9dBmですので、搬送波電力対干渉電力比C/Idは

となります。

2. 次に他システムC局と自システムB局間の干渉経路Didにはフェージングの発生が無く、自システムのA局⇔B局間でフェージングが発生しているときの搬送波電力対干渉電力比C/Id fmrを求めます。本検討ではこの状態を最悪条件としています。

C局、B局間はフェージングが発生していないので、他システム(d)2波の干渉電力Id(0)およびId(10)は式(19.7)および式(19.8)で算出した定常状態の電力値をそのまま用いることができますので、干渉電力Idは式(19.9)から

また、A局、B局間でフェージング発生時のB局受信電力が定常時から30dB(Fmr)低下した場合、搬送波電力対干渉電力比C/Id fmrは

となります。

3. 異伝搬路干渉のまとめ

図27の干渉モデルおよび図30の異伝搬路の周波数配置をもとに干渉検討を行った結果、定常時のC/Idは56.89dB、フェージング時のC/Id fmrは26.89dBとなり、ともに異伝搬路干渉雑音配分(第5回 図21)の21dB(2波)に対して満足する結果となりました。

これで無線回線設計の説明を終わります。

コラム 交差偏波干渉補償器(XPIC)

 固定マイクロ波通信方式では、ルートの伝送容量増大のため第8回講座 表11に示すような直交した偏波を用いたコチャンネル配置を行い、2倍の伝送容量を得る技術が用いられています。これは、正対したアンテナ間のH偏波とV偏波間の交差偏波識別特性を利用したものです。偏波には、直線偏波(V、H)と円偏波(右旋回、左旋回)がありますが、固定マイクロ波通信方式では直線偏波が多く用いられています。図に交差偏波干渉補償器の基本構成を示します。

交差偏波干渉補償器の基本構成
差偏波干渉補償器の基本構成

 交差偏波干渉補償信号の生成は一般にトランスバーサルフィルタが用いられます。

ワイヤレス電力伝送システム

 2015年7月、ワイヤレスでモバイル機器等に充電を可能とするワイヤレス電力伝送システムが標準規格化されました。標準規格番号はARIB STD-T113 1.0版です。1.0版は400kHz帯電界結合ワイヤレス電力伝送システムと6.78MHz帯磁界結合ワイヤレス電力伝送システムの2方式でしたが、さらに2015年12月にモバイル機器用マイクロ波帯表面電磁界結合ワイヤレス電力伝送システムが追加規定され、最新版は1.1版です。
 これらのシステムは電波法施行規則第45条第3号に規定される各種設備において、許可を要しない高周波出力値(50W)以下で運用されるものです。
 3方式とも扱う周波数は異なりますが「電磁波」を使用するため標準化の過程で、近接する周波数帯を用いている各種無線機器への干渉および解決すべき課題等について、一つ一つ検討を行い、解決しました。
 ワイヤレス電力伝送システムの3方式それぞれの特徴を生かし多くの分野に適用されることを期待したいものです。
DENGYOはマイクロ波帯を用いたワイヤレス電力伝送技術において高度な技術を有しています。

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